「見える」多様性・「見えない」多様性

 

Hello!

ホームリンガルティーチャーのFuminaです!

 

 

今回、大学の卒業論文で研究している多文化主義についてお話したいと思います。

 

「多文化主義」とは、あらゆる文化を等しく尊重して、異なる文化や背景の人々が共存する社会を指し、差別を撤廃していく思想のことです。

 

 

このテーマを研究しようと思ったきっかけは、海外で15年間暮らした経験にあります。

 

アメリカの東海岸で通っていた現地校では私が唯一の日本人でした。

移り住んできた当初は、地域の人々は私に冷たかったです。

母が毎日作ってくれる日本食のお弁当は、現地の人には馴染みがなく、気味悪がられました。

皆の輪の中に入りたかった私は、日本語を話すことも嫌になり、アメリカ人になりたいとさえ願いました。

 

その後、移り住んだ西海岸の都市は、様々な文化・背景・信仰を持つ人が共生している多様性に満ちた地域でした。

周りの人達は堂々としていて、お互いを一人の人間として接していました。そこでは自分らしく自然体で過ごすことができ、同じアメリカでも異文化の人に対する態度の違いに衝撃を受け、日本人である自分に自信が持てるようになりました。

 

 

アメリカの西海岸の多文化的な社会にいた頃の私は、日本人ということを意識せずにありのままの自分でいれました。

 

 

けれども、日本人である私が、今度は日本に引っ越してきて息苦しさを感じました。

15年間海外で生まれ育ってきたため、人種や文化の多様性がないこの国では周りの人達に理解されないと感じました。

 

私は確かに見た目は日本人であっても、自分は日本に属しているとは感じられませんでした。

 

しかし、日本に住んでいく中で、日本には目には見えない多様性があるのだと気づきました。

 

例えば、帰国子女、障がい者や性的マイノリティの方々。

このように、見た目ではわかりづらい多様性が溢れているように思います。日本はアメリカと異なる歴史を歩んできたからこそ異なる価値観が根づいていて、西洋の価値観を押しつけていた自分に気づきました。

 

 

少しかたい話をしますと、アメリカ合衆国の初の「黒人大統領」オバマ政権は、「多様性」は弱みではなく米国の強みだと発信してきました。

 

2016年には性的少数者の権利拡大、特に教育における性差別を禁じた教育修正法の制定といった進展がみられ、文化的多様性への積極性は広く共有・支持されたと考えられてきました。

 

しかし、2016年にドナルド・トランプが勝利し、白人層における多文化主義への反発が際立ちました。

多文化主義はマイノリティを優遇し、マジョリティである白人を見下す考えと見なされ、トランプの「アメリカ・ファースト」のスローガン、そして新型コロナウイルスの世界的流行が多文化の共存を大きく変えようとしています。

 

アメリカ国内では、アジア出身者に対するヘイトクライム (憎悪犯罪)や人種差別
が増加し続けており、「多様性」へのリスク意識が急速に高まってきているように思います。

 

 

世界に目を向けると、近年は文化的衝突によって社会の一体性が保たれないとして「多文化主義」を見直す国が相次いでおり、多くの移民を受けれいてきたドイツのメルケル首相は、「多文化主義は完全に失敗した」と発言しています。

 

 

しかし、私は多文化主義という課題に向き合っていくことで、より世の中が生きやすくなっていくのではないかと考えています。多文化主義は様々な批判をされてきましたが、各自のアイデンティティを尊重し、多様な文化的背景を持つ人々が共存する社会の実現を目指していくことには意義があると信じています。

 

 

目に見えない「違い」、目に見える「違い」に目を向けていくことが、誰にとっても生きやすい社会の実現への第一歩ではないでしょうか。「自分らしさ」を恥じる事なく、「自分」として自信を持って生きていきやすい世の中になっていけるよう願います。

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