言語習得―3つ目以降は楽だった!

 

多くの日本人にとっては、英語をマスターするだけで一苦労ですが、世界には三カ国語・四カ国語を巧みに操るマルチリンガルが多く存在しています。特にヨーロッパ諸国の言語は単語や文法が似ており、それゆえ複数を習得し易いとはよく聞く話です。しかし、母国語と類似するか否かに拘らず、何か一度外国語を身につけてしまえば、三カ国語目以降の習得が楽になるという研究結果が近年話題になっています。


 
その実験は、イスラエルの小学六年生を対象に、ヘブライ語とロシア語を話すバイリンガルと、ヘブライ語のモノリンガルとを比較して行われました。ヘブライ語、ロシア語(バイリンガルのみ)、英語の3つについて、彼らの理解力、読解力、スペリング力等を測定したのです。


 
すると、バイリンガルは英語とヘブライ語の両方において、モノリンガルより理解力が高いことがわかりました。また、英語においては、ライティング力が20%、言語形態(語彙と接頭辞や接尾辞との関係性)の理解度が35%もバイリンガルが勝る結果となりました。さらには、別で行った知能検査においても、バイリンガルがモノリンガルを7%上回る結果となったのです。


 
一体なぜバイリンガルは複数言語で高度な言語能力を発揮することが可能なのでしょうか。アメリカのジョージタウン大学の研究チームによれば、言語習得時の脳の働き方が関係しているということです。


 
当チームは、大学生を対象に、英語と中国語のバイリンガルと、英語のみのモノリンガルとに一週間の実験を行いました。両者に「Brocanto2」という独自の言語(英語や中国語と異なる言語体系・文法)を学んでもらい、その際の脳波と脳の動きを調査したのです。
その結果、バイリンガルの脳波には開始一日目から「P600」(人が母国語を認知・処理する際に見られる脳波)が検出されました。モノリンガルからも「P600」が検出されたものの、それは実験最終日になってからのことでした。また、モノリンガルは、母国語を認知する際に検出されない脳波が記録されたことから、不自然な脳の働きが生じていることがわかりました。


 
この二つの実験から、バイリンガルが三ヶ国語目を学ぶ際、よりネイティブに近い形で容易に、高度な言語能力を発揮できるということがわかります。更には、二・三カ国語目を学ぶことで母国語への理解も深まる、また知能レベルも上がるということがわかりました。


 
日本人も、中学校・高校で英語をものにできれば、大学進学後はまた新しい言語を効率的に学ぶことができるのではないでしょうか。

 

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